クリスタルドア

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zoom RSS クリスタルドア 11話

<<   作成日時 : 2011/02/21 00:30   >>

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秋の深まりが肌で感じられる頃、将斗は久美子に話しかけた。

「これから大仕事になるんだけどさあ、カラダがなまってきてしょうがないんだ。」

「そうなの」

「うん。だからさあ四、五日、外でカラダを動かしてカラダを半殺しにしてくる」

「それもいいかもね」

「どうぞ、どうぞご自由に」

「ありがとう」

「でも心配だから夜必ず電話いれてね」

「うん、わかった」

「ところでどこ行くの?」

「まだ決めてない」

「あなたらしいわね、まったく。」

「とりあえずクルマでアテもなくね。」

「なーんて言ったけど、湖を見たくなった。なんとなくだけど。」

「海じゃなくて?」

「そう、湖、山に囲まれた、湖をね。」

「じゃあ、頼むね。今から出るからさあ」

「えーっ、もうなの」

「もう止まらん」。

「どうにも止まらない」

「でたあ、必殺 将斗パターン」

「健太、バイバイ」

「バイバイ」
 
健太は将斗に笑顔で手を振った。

スポーツバック片手に軽装で将斗はクルマに乗った。

クルマのドアを閉めると久美子が健太と寄り添ってきた。

「一日一回絶対連絡してね。」

「おう、わかった。」 

「じゃあ、頼む」

「はい。気をつけて」

将斗はクルマのエンジンをかけた

クルマを走らせながら富士五湖のどこかに行こうと決めていた。

将斗は富士山周辺が好きだった。
将斗は富士の古代史に異常な程 興味をもっていた。
著名な歴史研究家の野茂氏と親しい間柄だった。
野茂氏の富士山麗に古代文明があったという話に強く惹かれていた。
野茂氏は邪馬台国についての著作も多数あり、邪馬台国は奈良の明日香の石舞台付近だということを強く主張していた。実際に、最近近くに遺跡が発見されその主張も学会はもとより、一般の人の間でも強い支持を集めつつあった。

 将斗は石舞台の写真を見た瞬間、頭に閃光が走り卑弥呼のイメージが広がったのだった。

「邪馬台国は明日香だ」
という確信は将斗のなかでますます強くなっていく。

 そしてもうひとつ、かつて映画界、出版界に革命をおこした出版社の社長が、魏志倭人伝をもとに、邪馬台国の所在を検証をしようと太平洋上を航海していた。それを日記にしたものを出版していた。
 その本を将斗は読んでいた。
それによって将斗の魂は揺さぶられたのだった。
 二十歳前後将斗はマグロ漁船に乗っていた。
当時の将斗は古代人の航海のイメージが胸に膨らんだ。
 将斗の脳は古代人に変容していたのかもしれない。いや古代人の脳そのものになり、
そして古代人の魂が将斗に乗り移ったのだろう。
 
邪馬台国の所在を知ることにより新生日本がスタートする。その啓示を将斗は受けたのだった。
邪馬台国の場所は、近い将来絶対にわかる。
それは富士の古代文明と連動しているんだという強い確信が将斗にあった。
クルマを走らせながら、将斗はマグロ漁船に乗っていた時を思い出していた。突然精進湖にしようと思い立った。
サービスエリアで精進湖付近のホテルに電話をかけた。幸い空いているという。
精進湖に着いた。部屋に入りトレーニングウエアに着替えた。トレーニングシューズに履き替えホテルを出る。
湖畔の道をジョギング。そして広場で百メートルダッシュ。そしてシャドーボクシング。
これが将斗式トレーニングのお決まりメニューだった。
四時間ほどこれを繰りかえし、ホテルにもどった。
シャワーを浴びた。自己流の座禅を組む。
富士古代文明のイメージが膨らんだ。富士山麗にコロボックルの集落があり、
高い文明をもっていたという説を野茂氏から聞いていた.
実は、将斗は古代史について深い知識があるわけではない。むしろ世間のモノサシからいったら低レベルといっていいだろう。将斗は歴史の年代も自体疑っていた。古代史の本を読んでも要点だけを把握しあとは全部記憶から消すという習性があった。大体ほとんどの歴史学者のいうことを信用していなかった。
 ただ野茂氏だけとは肌が合うようでいろんな説を拝聴していた。すべてにおいてそうだった。
脳の働きが一般人と明らかに違う。
 将斗は、人の話をほとんどマトモに聞いていない。
興味がないと自然に頭のスイッチがオフになる。妻の久美子と話しても内容をほとんど聞いていない。
 「あなた私の話を聞いてるの」と何度も怒鳴られている。そのうちに久美子は将斗に順応するようになっていた。すべてにおいて将斗ははじめに直感ありきだった。どうでもいいことは記憶から消す。直感がでてきてイメージが膨らむと運動神経にそれが伝わり、その後の行動力は爆発的なものがあった。

 シャワーを浴び自己流の瞑想をしたあと、
将斗は携帯で久美子に電話をかけた。
 「今日は四時間くらい動いた」

「ところで今どこなの」

「精進湖だよ。久美子にも、前、話したことあると思うんだけど歴史学者の野茂さんが言ってた富士古代文明が富士山周辺にあったという話。近くにくればなにかわかるんじゃないかと思ってね。」

 「なるほど」

 「たぶん樹海のあたりが中心だったんだろうな。そう感じる。そのあと静岡のほうに移ったんじゃないかな」

「ふーん」

「健太は?」

「今スヤスヤ眠ってます」

「そう」

「まだカラダを半殺しにするところまでいってない。しばらくここにいるよ」

「わかりました」

 電話を切った後、
(いつか明日香にいこう。その時、なにかがわかる)という想いが閃いた。

将斗が精進湖に着いたその日、小川美奈子は都内のイタリアンレストランにいた。婚約者と一緒だった。向かい合った二人に重い空気が流れる。
「あれからいろいろ考えたんだけどね。結婚を解消させてもらいたいんだ。申し訳ないんだけど本当に。」
美奈子は頷いた。
そしてしばらく沈黙が続く。
 「覚悟してました。そのことを私」

「本当にごめん」

「いいえ。迷惑かけることになるし私もつらいので・・・・」

「今まで楽しかったです。ありがとうございました。感謝しています。」

 美奈子は、将斗と草間と同じビルにいたあの日、婚約者に子どもの産めない身体になったことを告げていた。

 また二人の間に沈黙が続いた。二人はレストランを出る時握手して別れた。

美奈子はすぐタクシーを拾う。


タクシーのなかではずっと泣いていた。

「お客さん、着きましたよ」





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小説・クリスタルドア 総集編 1〜5

http://90299009.at.webry.info/201004/article_4.html


小説・クリスタルドア 総集編 6〜9

http://90299009.at.webry.info/201004/article_5.html

小説・クリスタルドア 10

http://90299009.at.webry.info/201005/article_1.html





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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「干上がった修法ヶ原池」にナイス玉をありがとうございました。
20年以上前ですが、神戸から単車を飛ばして富士五湖の河口湖の畔の民宿に泊まって、翌日箱根スカイラインを天空を翔ける馬のごとく走った思い出があります。

私も歴史が好きで、地元の歴史を紐解いてブログで紹介しています。

人生色々な事がありますが、登りもあれば下りもあって、山歩きのようだと常々思っています。
アルクノ
2011/02/26 23:23
アルクノさんへ

ご訪問ありがとうございます。富士五湖はいいですよね。クルマですぐ近くなんですけどね。行ったのは数えるほどで バイクで行けたらいいですね。バイクの免許とろうかなあ。歴史のこといろいろ教えていただけたらと思います。これからよろしくお願いいたします。
マサト
2011/02/27 19:37

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